浅草・冬の光
写真・文/写真家 藤井智弘
ある冬晴れの日、浅草を歩くことにした。浅草といえば今やすっかり外国の観光客に人気のスポット。あまりの混雑でつい敬遠していたが、自分も旅をしている感覚になって改めて見てみようと思ったからだ。その気持ちにさせてくれたのが、ShiftCamのトラベルセット。その名の通り旅感覚で写真が撮れるiPhoneケースだ。
私が使用しているiPhoneはiPhone 7。数年前のモデルだが、小さくて軽いところが気に入っている。 ShiftCamはすでに型落ちになっているiPhone 7にも使用できるタイプがあるのが嬉しい。
iPhone 7には背面側にレンズがひとつしかなく、ピンチでデジタルズームができるだけだ。しかし ShiftCamを装着すると、広角、魚眼、マクロが可能になる。iPhone 7単体では不可能だった表現が楽しめるのだ。 ShiftCamを装着したiPhone 7を上着のポケットに入れて浅草に向かった。
浅草駅を降りると、墨田川に掛かる東橋の上を多くのユリカモメが飛んでいる。ユリカモメは東京都民の鳥として知られているが、冬になると飛来する渡り鳥だ。そのため水辺でユリカモメを見ると冬を感じる。数羽のユリカモメが頭上を低空で通過した。撮りたい瞬間にすぐ対応できるのがいつも携帯しているiPhoneだ。 ShiftCamを広角レンズにセットし、逆光で空を大きく入れて、そのうちの一羽を狙う。背景には浅草らしいオブジェが入り、ノーマルのiPhoneでは得られないダイナミックな写真が撮れた。
ShiftCam広角レンズ/iPhone 7で撮影
浅草を代表するスポットである雷門と浅草寺。雷門の前では、多くの人が浅草のシンボルである大提灯をカメラやスマートフォンで撮影している。しかし正面の姿は有名でも、提灯の底はどうなっているのか知っている人は少ないのではないか。 ShiftCamを魚眼レンズにセットして、大提灯の真下からiPhoneを見上げる。雷門の大提灯の底は、龍の彫刻があるのだ。魚眼レンズにすることで、その世界を丸ごと取り込めた。そして冬の光は斜めから降り注ぐ。あえて画面上に太陽の光を入れて、冬らしさを強調した。
ShiftCam魚眼レンズ/iPhone 7で撮影
浅草寺の本堂手前の宝蔵門(仁王門)も多くの人が行き交っている。そして左側には五重塔が見える。冬らしいヌケのいい空と合わせて撮ろうとしたが、iPhoneのノーマル状態では画面が窮屈だ。
iPhone 7で撮影
そこで ShiftCamを広角レンズにすると、行き交う人、宝蔵門、五重塔、青空がバランスよく収めることができた。
ShiftCam広角レンズ/iPhone 7で撮影
浅草寺の境内を歩いていると、小さな木の先端に、色付いたままの葉を見つけた。 ShiftCamをマクロにセットしてクローズアップ。逆光で太陽と葉を重ねると、葉が透過光になって美しい。そして背景には五重塔。冬晴れの浅草だから撮れた写真だ。
ShiftCamマクロレンズ/iPhone 7で撮影
寺院や神社でお馴染みなのがおみくじだ。浅草寺でも吉凶を占って喜んでいたり、残念がっている姿がたくさん見られる。結ばれたおみくじのひとつにiPhoneをノーマル状態で近づける。背景に建物が入り、雰囲気は出ているが、さらにおみくじを強調させたい。
iPhone 7で撮影
ShiftCamをマクロにすると、おみくじのひとつをクローズアップできた。紙の質感や文字が印象深くなり、差し込む光が冬ながら温もりを感じさせる。
ShiftCamマクロレンズ/iPhone 7で撮影
浅草というと下町、古い街並みをイメージしがちだが、墨田川を渡るとすぐに有名なオブジェと共に近代的で巨大なビルが建ち並んでいる。ビルに反射する太陽の光と青空が美しい。iPhoneノーマルの状態では、ストレートにビルと青空という写真だ。
iPhone 7で撮影
ShiftCamを魚眼にして、ビルと反射する太陽の光、そして青空のすべてを収める。円形の画面と歪曲したビルにより、その場の印象を強調した表現ができた。魚眼は自分の指や影が入りやすいので、画面をよく見て余計なものが写り込んでいないか確認するのがコツだ。
ShiftCam魚眼レンズ/iPhone 7で撮影
浅草は東京スカイツリーがよく見える。すると手前を二人が歩いて行った。東京スカイツリーと二人を ShiftCamの広角レンズで撮る。冬を感じさせる写真になった。
ShiftCam広角レンズ/iPhone 7で撮影
ShiftCamはカメラのレンズを交換するように、撮りたいイメージに合わせられた。ここでは、iPhone用のAdobe Lightroomのカメラ機能を使ってDNGで撮影。クラウドに保存されたデータをパソコンのLightroomで展開し、明るさやコントラストなどの微調整を行っている。iPhoneで撮影した写真をコントロールするのに最も気に入っているワークフローだ。 ShiftCamによって、iPhoneで写真を撮る楽しさがより広がるのを実感した。
写真家 藤井智弘(Tomohiro Fujii)
1968年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1997年に写真展を開催後、フリー写真家になる。現在はカメラ専門誌やWebでの撮影や執筆、企業のPR用撮影、カルチャー教室講師など幅広く活動する。また作品では、国内や海外の街を撮影。特にヨーロッパはモノクロにこだわっている。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。